リ総研だより

リ総研だより vol.9

リ総研に来てみて

今月のコラムを担当します研究開発課の室屋行宏です。

リ総研に入って、早いもので、もう三年を越えました。

今回は、動脈系企業出身の私が、リ総研に来てショックを受けたこと、そして今、感じていることについて、書かせて頂きたいと思います。

私は、現役時代は、家電品や衛生機器商品の商品企画・研究・開発・購買・製造などの業務で、長く耐久消費財のものづくりにたずさわってきました。

また私が就職した時代は、いわゆるバブルの時代で、家電品も当時は半年ごとにモデルチェンジするので、絶えず、新しいデザインや技術や材料を新しいモデルに採用することを繰り返しておりました。今、リ総研が唱えているリデュース・リユース・リサイクルの3Rを全く考えない研究や開発や製造を繰り返していたのです。

ほぼその感覚のまま、三年前にリ総研にお世話になることになりました。

リ総研では、入所何日目かで、廃棄物処理企業様の作業現場を見学させて頂きました。

その現場が、私にとっては大変ショッキングでした。

役目を終えた家電品があちらこちらに何日も山積みされ、野ザラシのあげくにシュレッダーの中に投げ込まれ、ギロチンシャーという恐ろしい名前の大型の刃物でバラバラ粉々に切り刻まれ、細かい金属のかけらやプラスチックの屑となっていました。

それは、まさしく”家電品の墓場”とも言える光景でした。

廃家電イラスト
男性イラスト

更にショッキングだったのは、工場の端っこで、シュレッダーで切り刻んだ後の金属のかけらやプラスチックの屑の中から、更に鉄や銅、アルミなど価値のあるものを、人間の手で、一個一個を素早く、選別していたことでした。

自分が仕事でよく行っていた東南アジアのタイやベトナム、インドネシア、中国、南米のメキシコなどで、当たり前に見ていたことを、現在の日本で、間近にみたのはとてもショッキングなことでした。(東南アジアでは幼い子供達がそんな現場で、働いていたことも大変ショッキングでしたが・・・。)

日本で、現場を案内頂いた工場長は、ここを何とかしたいんだが、今は人間しか選別できないんだ。人間って本当にすごい! でも近いうちに何とかしたい、とポツリと、でもしっかりと言われました。

私も一緒に何とかしたい! そこからが私のリ総研のスタートでした!

これからの未来に期待して

リ総研でのこの三年の間にも、企業や大学、研究機関の方々と一緒に、色々な困り物の廃棄物の問題を何とか解決したいという、熱量の高い方々のお手伝いをさせて頂きました。

本当に、一つ一つが勉強と反省、そして創造の繰り返しでした。

でもその中で、運よく、県が重点施策とするIoTやAIの事業、またAIを必要とする選別技術を開発するテーマなどを担当させて頂きました。

最近、この廃棄物の世界にもIoTやAIやビッグテータの解析技術がどんどん入り込んできています。

皆さんは、例えば、廃棄物を選別するフィンランドZEN ROBOTICS社の「ゼンロボティクスリサイクラー」や日本のMUJINという会社のAIが搭載された「知能ロボットコントローラ」をご存じですか?

もしご存じなければ、WebsiteやYouTubeで、是非一度ご確認ください。

人間の代わりに、想像以上に機敏で滑らかな動きにびっくり、目が釘付けになると思います。

昨年から自分が担当するIoTやAI、選別のテーマを進めるにあたり、それらを販売している企業様や開発製造している開発者の方々に話を聞く機会をえましたが、驚いたのは、その主体となっている開発や研究者の多くが、とても若く、外国人も多かったことです。

また私が訪問した幾つかの企業もTVで紹介されたGoogle(Alphabet)のように、職場内に、息抜きの遊び場や無料の飲み物、食べ物が置いてあり、とても自由な雰囲気でした。羨ましい反面、若い人がリーダーシップを取っていることに何かホッとした反面、とても力強いものを感じました。

現在、地球規模的には、コロナや米中対立、地球温暖化による豪雨、そして地震.廃棄物的には、海洋プラやPV廃棄などの問題とサーキュラーエコノミーによる廃棄物の資源化と実現が難しい大変な時代に突入していますが、私は個人的には、まだ上記で出会ったような若い人の力がつくる人間の未来に希望を持っています。

動脈側で色々な製品を生み出し、廃棄物を過去垂れ流してきた一人として、私自身、大変申しわけないと思っていますが、これからの人間の未来を創る力に大いに期待しています。

先にお話しした金属のかけらなどの人間の選別作業も、AIやディープラーニングの発達により、人間とAIシステムが本質的に協力、協働で働き、お互いの能力を増幅している世界が、思ったより早く実現されるのだろうと思っています。

私が昨年から幾つかの企業や大学の方々などと取り組んでいる廃棄物の選別作業の自動化システムが完成すれば、それが関連の企業の皆様の色々な選別作業にも活かせる一つの技術のひな型になることを期待しています。

最後に一つ、このコラムの読者で、特にモノを生み出す動脈系で活躍されている若い研究者や開発者の皆さん、是非、廃棄物を処理している工場の見学や話を聞かれてみまませんか?

自分が研究、開発、設計、製造したものが、最後にどうなってくのかを見ることは、きっと皆さんの心に強く、長く突き刺さることになると思います。

それが例えば、解体や資源回収を前提としたリサイクルなどの3Rを考えた研究、開発、設計、製造をモノづくりの上流側で考え、議論し尽くすということにもつながってくると思います。

それでは、リ総研でお会いしましょう!

 

男性イラスト
男性イラスト

《今回のコラム担当》

研究開発課 コーディネーター 室屋 行宏

お困りの廃棄物に関する色々なご相談を受け付けております。お気軽にご連絡ください。  

また廃棄物処理工場や選別機などの見学の希望が多ければ、

リ総研の事業の中での見学会を開催する可能性もありますので、

是非ふくおか3Rメンバーズ事務局まで、ご希望をお申し出ください。