リ総研だより

リ総研だより vol.15

私と世の中の意識変化について(SDGsとESG投資などを通じて) プロジェクト推進班長 前田 和紀

 私は、リサイクル総合研究事業化センター勤務3年目ですが、現在事業を進めるに当たってSDGs(持続可能な開発目標)やESG投資(従来の財務情報だけでなく、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)要素も考慮した投資)について関係各所に啓発・説明することが多くなりました。
 これまでのSDGsとESG投資を中心とした経験から感じた私と世の中の意識の変化を述べていこうと思います。
 今から約3年前の平成29年度に福岡県の環境部に在籍していましたが、このとき環境白書や福岡県環境総合ビジョンの策定があり、資料(案)に色とりどりの四角が描いてある図表を見て、「これなんだかわからないけど、何かむずかしいな」ぐらいに思っていました。これがSDGsとの出会いでした。
 平成30年に当センターへ転勤となり、食品ロス削減事業の一環としてフードバンク活動の普及・促進事業を担当するようになりました。生協関係者の方とお会いした際に、色とりどり(後でよく見ると17色。SDGsの17の目標)のピンバッジをしているのに目を惹かれました。
 これがSDGsについての最初の関心になったと記憶しています。
 この当時は、まだまだSDGsについて世の中の関心は低く、企業においてはCSR活動(企業の社会的責任)に関心が向いている傾向に見えました。そして、企業が社会的責任を果たすため、回収できないコストをかけて頑張っています。しかし、CSRを実施するにはコストがかかり余裕がないときにはなかなか取り組めないという印象を強く受けました。
 このため、企業に食品ロスの寄贈についてお勧めしても、なかなか食品ロス提供に踏み出せないという事例が多かったように記憶しています。
 福岡県で発生している食品ロスを県内全域で安定的・継続的に削減するためのフードバンクシステムを構築するために、一般社団法人福岡県フードバンク協議会の平成31年4月設立を目指し、宣伝用のリーフレットを作成したときに、フードバンク活動とSDGsの関係を認識し始め、さらに、一般社団法人九州経済連合会の月報「あすの九州・山口」2019年6月号に寄稿させていただくに当たり、SDGsの勉強をさせていただきました。
 令和元年8月30日に一般社団法人福岡県フードバンク協議会の設立を記念してシンポジウムを開催しましたが、このときには、「SDGsの取組みにより、社会的課題の解決を行い、企業収益が図られる場合は、ESG投資が呼び込める。銀行や投資家が、環境、社会、 企業統治に対して積極的に取り組んでいると判断した企業に対して行われます資金貸付や株式投資により、企業は資金調達を有利に行うことができるようになる。」という認識に立っていましたので、そのような発言を行いました。
 現在は、当班の他事業(廃棄太陽光パネルスマート回収システム構築事業、プラスチック再資源化促進業務)においても、SDGsに取り組めば、ESG投資を呼び込め、企業経営に有利であるということをことあるごとに啓発・説明している状況です。
 世の中を見渡しても、平成30年度時点はSDGsの認識は低かったのですが、現在はホームページを開けばSDGsがあふれ、テレビ局においても啓発されるようになっています。
 また、環境省のESG地域金融の先行事例調査に関する検討会が作成した「事例から学ぶESG地域金融のあり方 -ESG地域金融の普及に向けて- 2019年3月」において、地方銀行においても、ESG投資の積極的活用を試みている記載があります。
 西日本シティ銀行においては、令和元年10月から子ども食堂応援私募債「希望の環」の取扱いを始めました。この私募債は、第三者機関によるSDGs(持続可能な開発目標) 取組み状況の調査、西日本シティ銀行からの認定証取得を通じて、地域貢献活動への取組みをアピールできるというもので、発行手数料の一部(発行額の0.2%相当)を一般社団法人福岡県フードバンク協議会経由で子ども食堂に寄付される仕組みとなっています。この寄付を福岡県内の子ども食堂やフードバンク団体の活動に役立たせていただいており、非営利活動の安定的な運営に資するものであり、このような私募債の設定をしていただき非常に感謝しております。
 SDGsやESG投資について、不知・無関心から興味・活用へと意識の転換が起こるなんて平成30年度には予想もしていなかったのですが、この変化にとても驚いています。
 また、フードバンク活動の普及・促進事業についても、平成30年度当初はなかなか支援がいただけないなどの逆風を感じていたものが、時間の経過とともに関係各所の支援が徐々に増え、全国でも例を見ないフードバンクの社会システムを構築でき、安定的な運営ができるようになったことも、世の中の意識がこのように変化することも全く想像できませんでした。
 「私も世の中もあるよい方向に向けて行動すれば、意識も変わっていく。なぜかうまくいく。」このように感じた3年間でした。

SDGSロゴ・バージョン2、SDGSカラーホイールおよび17のSDGSアイコン
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