センター長より

センター長コラムvol.2「資源とは?」

資源とは?

リサイクルのことを考える際に意識しないといけないのは、“資源とは?”です。一般にリサイクルを評価する場合リサイクル率が使用されます。また、個別リサイクル法の中に再資源化率、再商品化率などの言葉が使われます。本質的には資源の定義が重要になります。

私がいつも使用している主に鉱物資源の定義を下記に示します。必ずしも広辞苑などの辞書にはこう書いてありません。

 

 ・社会が“価値がある”と認めるもの  (一番は人的資源?)

 ・鉱物資源に限れば、採掘して、有用物の分離を行うことがその時々の経済合理性の上で可能なもの

 ・イメージとして、「希少」、「高価」であるが、高度に機械化された大量生産システムの現代では、一定の品質が一定量確保されるもの
 


ポイントは“一定の品質が一定量確保される”ところです。その理由は現代を支える大量生産方式です。今回はその点の話をいたします。


本来、金属素材製造とは、原材料から不純物を除き、目的の組成の素材を製造することです。たとえば代表として鉄鋼製品を考えましょう。鉄鋼も原材料である鉄鉱石(酸化鉄)から酸素を除き、その他の不純物(C,S,P,Si等)を除き、最後に成分調整を行った後に、成形します。18世紀の産業革命以後、人類はそれまでの人力、畜力、水力、風力のほかに蒸気機関、内燃機関、電気モーター、原子力など大きなエネルギーを制御できるようになりました。その結果、装置の大型化を進め、効率のよい生産技術の開発に成功しました。現在のような大量生産技術を確立したのです。おかげで多くの人口を養うことが可能な食料を生産し、中世では一部の貴族しか行えなかった豊かな生活を営むことが可能となりました。よく大量生産は悪のように言われることがありますが、冷静に考えるとこの生産システムがなければ、現代の生活は成立しません。

鉱山のイメージ画像

 

この素材の大量生産システムと技術の本質を支えているのは、現在の金属資源のあり方です。資源の一般的な定義は難しいですが、金属素材資源に関しては上記に示したように「素材の源となる成分を高濃度に含み」、「不純物が一定しておりかつ一定箇所に一定量集中して存在すること」と定義できます。このように現代は大きく二つの異なった性質を持たなくては資源と言えません。二つとも重要ですが、大量生産を可能ならしめているのは、後半の「不純物が一定しておりかつ一定箇所に一定量集中して存在すること」にあります。例えば銅鉱石の平均濃度は約1%以下です。この濃度は決して高濃度とは言えませんが、硫化鉱であることを利用し、浮遊選鉱で高濃度に濃縮する技術を開発した現代では、この濃度で資源として使えます。もちろん不純物の濃度が一定し、量がまとまって存在することが必要です。つまり不純物の種類や量が一定していることで初めて大量生産システムの中に投入することが可能となるのです。不純物の除去法は不純物の濃度によって大きく異なります。不純物が一定しないということは、原料が変わる度にプロセスを変えることを意味し、このような製造システムは組み立て産業ならまだ対応可能ですが素材産業では不可能です。したがって、高濃度の鉱石でも不純物の種類や濃度が不安定で、集中して存在しない場合は、標本としての価値はありますが、資源としては無価値となります。この資源の意味は、リサイクルを考える際に重要です。

表1に昔から講演で使用している天然資源と人工資源の特徴の比較を示します。

天然資源と人工資源の特徴を示した図

この表に示すように、天然資源は現在の経済原理の中で採取可能と判断されたものが資源とみなされるのですから“天然資源がこのような特性を持っている”という言い方はおかしく、“このような特性をもったものを発見して天然資源とみなしている”のが現実です。一方、リサイクルの対象となる人工資源は、表1で示した特性を持った人工物です。ここで多くの方が品位ということばになじみがないかもしれません。簡単に言えば原料の中に含まれる有用成分の濃度です。通常金属スクラップのような人工資源の方が有用成分濃度、品位は高いのです。ところがなぜよくリサイクルは経済合理性がないと指摘されるのでしょうか?それは、不純物が不安定でかつ収集にコストがかかるために大量に集める部分が高コストになりがちなためです。つまり、現状のリサイクルが必ずしも経済合理性を持ったものを対象としていないからです。

今回は長くなりましたので、ここで終わりにします。次は、今話題のプラスチックの話をします。