センター長より
2021年11月29日
【第3回】中村 崇のサーキュラーエコノミー塾
サーキュラーエコノミーと廃棄物処理
中村 崇
CEがどこまでカバーした経済圏を考えるのかは本質的な問題です。
図1にサーキュラーエコノミーのカバーする経済範囲とリサイクル・廃棄物処理を明確にするための概念図を示します。
”枯渇性資源”の流れを中心として記載しており、バイオ系は直接的には含めていません。
大きくは枯渇性資源の採取から、素材、材料、部品、最終製品の製造、販売、消費、廃棄、収集、リサイクルと循環します。現実には枯渇性資源の採取の現場では、相当量の不要となる残渣(残土)が残され、状況によって利用されることがありますが、多くは現場で単に土壌として残されます。以後の各工程ではそれぞれ内部でのリサイクルが行われていますが、量的には明確でありません。その量を推定するには各工程での資源生産性をチェックする必要がありますが、統一された形式として表現されていません。
もちろん各工程で廃棄物は発生し、そのためのリサイクル・廃棄物処理で資源化、無害化が進められます。
ただし、最終製品メーカーと消費過程で発生する廃棄物は、リサイクル・廃棄物処理工程から直接最終製品メーカーと消費者に戻ることはありません。代わりに最終製品メーカーと消費者の間ではリユースが行われます。最近の中古品市場の拡大は消費者の中古品に関する感覚の大きな変化によるもので、“もの”から“こと”への転換が進んでいることを表しています。
ここで循環経済を考えるうえでリサイクルはともかく廃棄物処理をどう考えるかが問題となります。
CEをまったく新しい概念と考え、ビジネスの在り方を根本的に変革する必要があると考える人は、CEの中に廃棄物の概念を入れることを嫌う傾向があります。理想的な循環経済の中では廃棄物は発生しません。一方現実の世界で廃棄物を発生させないで人間生活を行えることは考えられません。
繰り返し問いますが、本来すべての“もの”が何らかの形で循環利用できれば廃棄物処理は不要です。
循環経済の最終目標は廃棄物処理ゼロの世界ともいえます。理想的な世界では考えられますが、現実世界でどこまで達成できるでしょうか。現実の生活から廃棄物の排除ができないならば、含めて考える方が制御できるメリットがあるといえます。日本では非常に緻密な廃棄物処理・リサイクルに関する法律が存在します(1)。ただし、大前提としてバイオ・プラスチック系廃棄物のリサイクルの中にエネルギー回収が含まれています。この存在をいかに循環経済の中に組み込むかは、大きな課題で、解答はまだ出ていませんが、日本式の循環経済を作り上げるためにはこの議論を避けては通れません。
バイオ・プラスチック系廃棄物のリサイクルの中身を解析し、マテリアルとしての使用とエネルギー回収と環境面でどう違うのかを科学的に解析するのも循環経済を進める大きな仕事となります。
(1)環境省 各種リサイクル法等関連 https://www.env.go.jp/recycle/recycling/