センター長より

センター長コラムvol.3「海洋プラの話題」

海洋プラの話題

このところ中国の廃プラスチックの輸入禁止、海洋プラスチックによる汚染問題などプラスチックのリサイクルが大きな課題になっています。かなりの頻度でTVや新聞等のマスコミに“大問題”として流れています。10年以上前になりますが、ちょうど“レアメタルが大変だ”とマスコミをにぎわしていたのを思い出します。日本人の常として“熱しやすく冷めやすい”のでできれば今回はいい機会なので、本質的なところにじっくり取り組んでほしいと思っています。

現在議論されている問題は特に今顕在化したわけではありません。先送りされていた課題が一度に噴出した形で、目の前のビジネスが大変な人々と以前から警鐘を鳴らしていた人々の両者の声が合わさった感じです。ただ、この両者の最終目標は一致しない可能性が高いので、何を目標に活動しているのかしっかり押さえておく必要があります。

このコラムはのんびりと思いつくままに書いて行く予定でしたが、やはりリ総研の人間としてなるべく早く一言プラスチックのリサイクルについて書こうと思いたち筆をとっています。

まずは、海洋プラスチックの問題からです。この本質は人工高分子素材であるプラスチックは自然と分解することがないか、もしくは分解が極端に遅い材料であることに一因があります。それでも、簡単に海もしくはそれにつがなる川と陸域で“捨てる”ことをしなければいいわけです。ただ、これが人間にとって簡単でないことはすぐに理解できます。はっきり言ってごみのポイ捨てを含み不法投棄をなくすことは容易ではありません。

海洋プラスチックの衝撃的な写真はネットで多く見ることができますが、代表的なものとして下記リンクに示します。

 

また、海岸に打ち上げられた廃プラの写真を写真1に掲示します。

海岸に打ち上げられたプラスチックごみの画像
写真1 海岸に打ち上げられたプラスチックごみ

 

これらの写真は我々に大きなショックを与えることができます。中国による廃プラスチックの輸入禁止は多くの人にとっては実感がわかないと思いますが、上記の写真は感覚に訴えることができますので、効果的です。

さて、海洋プラスチック問題を解決するにはどうしたらいいでしょうか。行動をとるべきセクターは大きく3つあります。表1に現状と併せて解決のための方向性を示します。

表1 各セクターが果たすべき行動

セクター

現状

目指すべき方向

プラスチック製造メーカー 高分子合成メーカー

機能性を追求する開発は行うが、易リサイクル性のプラスチック素料の開発意欲は小さい。

コスト的に受け入れられる生分解性プラスチックの開発、それも環境によってどのレベルの分解が進むのかを明確にすることができるものが望ましい(特に海水で早く分解できる機能)。
コンパウンドメーカー 高性能を目指すために種々の添加剤を開発、混入する。 できるだけプラスチックの種類を増やさないで、加工法の工夫で性能アップできる技術を開発する。当然添加物の使用を抑える。
プラスチックユーザー 最終製品メーカーならびに小売業

低コストでできるだけ高性能のプラスチックが欲しい。日本企業の性能要求は高い。

見た目に美しい材料、性能向上のためには複合化は気にしない。

使用方法によって適正な性能で抑える技術開発。

製品から簡単に分離できる作り込み方。
一般消費者ならびに地方自治体

便利なものが欲しい。処理コスト(リサイクルも含む)が高いのはいや。

ともかく廃棄すべきところに廃棄する。

海洋の大事さを理解する。

環境配慮型製品を選択する。

収集の効率化を図るためのシステム変更をサポートする。
リサイクラー できるだけ処理しやすいように製品設計をしてほしい。かつ、収集はメーカーやユーザーに負担してほしいし、収集段階で分別してくれると助かる。 集めた廃プラスチックの再利用、再生利用、その他のカスケードリサイクルについて自分の技術がどこにあるのか常に考えておく。リユース、リサイクルの優先順位を考えた処理。

 

表1の内容にはプラスチックリサイクルの一般論も含まれていますが、それが海洋のプラスチック汚染の防止にも効果があると考えてください。当然ですが、海でプラスチックの自然発生はないわけですから、陸域でいかにきちっとした処理ができるかにかかっています。

この中には直接的に国の役割が入っていませんが、国は全体の各セクターの情報を整理し、バランスをとるように制御することが大事で、時に応じて法律的な縛りや得意の行政指導を行うことになると思います。また、プラスチックの海洋汚染に関する事実検証を学術的に行うことをしっかりとサポートすることが重要で、このようなことは国でしかできません。

もちろん、発展途上国に対する適切なリサイクル、処理のシステム、技術支援を行うことも忘れてはいけません。

 

次回もプラスチックについてお話します。