センター長より

センター長コラムvol.5「廃プラスチックのリサイクル」

廃プラスチックのリサイクル

廃プラスチックのリサイクルはずっと議論されていましたが、外部環境が厳しくなり、本格的な議論が始まりました。これまでのコラムを基に少し考えてみましょう。リユースは別の機会に考えますので、今回はリサイクルに限定いたします。

素材としてのプラスチック(エンジニアリングプラスチックやCFRP(炭素繊維強化プラスチック)等は除く)の特徴は、金属と比較して①軽い、②透明なものができる、③強度も製造方法次第で強化できる、④加工性に優れ、色々な形が比較的簡単にできる。弱点は、耐熱性が低い。燃えるので燃焼防止のために難燃剤が必要ということです。

これをリサイクルの視点から見ると、「①軽い」ということは、廃プラスチックの回収輸送の効率が低いことになります。「④加工性に優れ、色々な形が比較的簡単にできる」ということは、塊状のものだけでなく、フィルム状のものが比較的簡単にできることになります。特にフィルム状に加工するのは金属素材では大変難しいためプラスチックの大きな優位性ですが、これがあるためリサイクルが難しいことが多々あります。廃フィルム素材のハンドリングの悪さには定評があり、また海洋プラ汚染の一つの原因にもなっています。そのためレジ袋反対のキャンペーンがなされています。

弱点の一つである耐熱性が低いということをカバーするために難燃剤が使用される点については、リサイクル性の低下につながっており、現在臭素系難燃剤の廃止に向けて技術開発が行われています。

さて技術を見てみましょう。

我が国では廃プラスチックのリサイクル技術の概略は表1のようになります。

ここでは、マテリアルリサイクルとケミカルリサイクルのどちらが環境的に優れているとかの議論はしません。不毛な議論といえるかもしれないくらい、はっきり結論を出すのは難しいでしょう。問題は、そのことが分かっていてどちらの技術(プレイヤー)も自分の手法が優れていると主張することです。どのような廃プラスチックがどのように回収されたかに依存する話で、単純に優劣がつくわけではありません。基本的に廃プラスチックリサイクルの経済的な課題のかなりの部分がロジスティック(物流)の負荷に依存しますので、回収量と質ならびに回収された地域で最適化を図るしかありません。

表1 リサイクル技術の分類と内容

わが国における概略の分類

国際的な呼称

リサイクル方法

リサイクルの具体的な内容と課題

マテリアルリサイクル Material Recycle 再生利用

廃プラスチックの高分子構造をそのまま利用し、再度プラスチック製品を製造。

プラスチックリサイクルの上位概念であるが、このリサイクルは回すのに限界がある。

純粋な高分子だけで使用されるプラスチックは少なく、多くの場合添加物もしくは表面処理が施されている。また前回のコラムで述べたようにプラスチックは高分子重合体の3次元構造で成り立っているために加工を続けるとその構造が壊れたり、重合度の低下が進み、特性が低下する。

ケミカルリサイクル Feedstock Recycle 原料・モノマー化 高分子であるので、一度モノマーに分解し、精製を行うことで完全に元に戻すことが可能。しかしそこまですると高コスト並びにトータルLCAで本当に環境にいいのか不明。
高炉還元剤 プラスチックの形としては利用できずにコークス代替となり、還元剤として使用される。
コークス炉原料剤 プラスチックの形としては利用できずにコークス炉ガスとして化学原料となるが、場合によっては高度なエネルギー回収となる場合がある。
ガス化・油化 多くの場合、モノマー化もしくはガス化され一部化学原料、一部エネルギーとして利用される。その境界をきちんと分けられない場合もある。

サーマルリサイクル

Energy Recovery

セメント原料・燃料化

ごみ発電

RPF

RDF

セメント焼成の燃料ならびに一部の添加剤は、セメント原料になる。

ごみ発電には、比較的高度なプラスチック主体の原料を使う場合と、他のごみ(例えば紙、繊維など)とプラスチックの混合物を固形燃料として使用する場合がある。

 

 次回は技術をベースにサプライチェーン全体を通して廃プラスチックの環境問題にどのように取り組むかを示したいと思います。

福岡県リサイクル総合研究事業化センター長
福岡県リサイクル総合研究事業化センター長 中村崇