センター長より

【第6回】中村 崇のサーキュラーエコノミー塾

サーキュラーエコノミー塾

資源循環は脱炭素に貢献できるか(2)

中村 崇

図1
図1 エレンマッカーサー財団が示した資源循環図(環境省訳)

 さて前回のコラムのエレンマッカーサー財団のバタフライの図の左側の資源循環を考えましょう。こちらが古くから行われている資源循環です。

 資源循環は、わが国では古くからリデュース、リユース、リサイクル(3Rs)として環境問題の解決を図るうえで重要な行動指針として提案されていました。昔からの日本語である“もったいない”“Mottainai”はリユースの考え方です。(1)
この考え方は日本人には結構体感覚で理解できます。
“Mottainai”でノーベル平和賞を受けたWangari Maathai氏の写真を示します。
ある意味日本のカルチャーが認められたことを意味すると思っています。

Wangari Maathai氏

 環境省は、2016年にG7サミットが行われた際に富山物質循環フレームワークに基づき、化学物質や廃棄物について、ライフサイクルを通じて適正に管理することで大気、水、土壌等の保全や環境の再生に努めるとともに、環境保全を前提とした循環型社会の形成を推進すべく、資源効率性・3Rと気候変動、有害物質、自然環境保全等の課題に関する政策を包括的に統合し、促進することを表明しました(2)。このように資源循環はその部分を取り出して進めるだけでなく、エネルギー削減、しいては化石燃料の削減、気候変動にも貢献できることを認識する必要があります。
そうでない資源循環など意味がありません。

 さて資源循環と脱炭素ですが、なんとなく感覚的には受け入れることができます。
その条件を考えると

一次資源から製造する場合のCO2発生量 > 二次資源から製造する場合のCO2発生量

の関係が成立すればいいわけです。
考え方は非常に単純です。
ただし、一次資源から製造するCO2発生量、二次資源から製造する場合のCO2発生量を算出する際に、ただ、その直接的なオペレーションを行っている際に発生するCO2だけでなく、そのために準備された資材を作るためのCO2(いわゆるカーボンフットプリントのScope3)まで含めるとなると簡単ではありません。
特に二次資源からリサイクルで製品を製造する場合であると、収集のためのCO2などが多い場合もあり、それは収集の社会システムにも依存します。
よく指摘されるのが輸送のためのCO2発生です。そのため合理的な回収の社会システムを組む必要があります。
以下定性的にその状況を考えてみます。

 脱炭素と資源循環を結び付けるには、できるだけ循環の輪を小さくする必要があります。そのためには単に物質を再生する技術のみで達成するのは難しいと言えます。
我々は最終製品を生活のために使用していますが、いろいろな理由で手放します。
その手放し方に応じて有効利用の形が変わります。
比較的簡単に再利用ができるもの、また、簡単な手直し、修繕で再使用が可能な場合もあれば、どうしても再使用が難しいものもあります。さらに再使用できるのに、手放し方が悪いとできなくなります。
一般には、3Rsですから長寿命で使用する、それから別の目的で再利用する。最後にリサイクルになります。
そのためにはどこで誰がどのようなものを不要とするか知ることが必要です。

 昔は大変小さな範囲の社会でしか知ることができませんでしたが、現在は情報技術の進歩で、リアルタイムで具体的な外観まで見えて不要物が把握でき、かつそれに値を付けることで昔の物々交換の感覚で簡単に再利用ができます。
それだけでも効果的と思われますが、残念ながらその効果が簡単には見える化できません。この取引を行うとCO2削減にどの程度効果的かわかるソフトがあるとより効果的になると思われます。
したがって、循環の社会システムを考える場合、リユースを始めに持ってくる必要があり、このことを十分に配慮した回収システムの確立が重要です。

 始めにリユースですが、何をターゲットにしているかを十分に考える必要があります。
当然でありますが、リユースできるものはリユースに回すのが資源生産性向上に効率良いことになります。
リユースは、高速の進歩を遂げている情報通信分野に関わる製品にはあまり対応できません。
もちろん、むやみに新製品を提供し、消費を促進するのは問題ですが、本質的な技術革新により、新たな製品が出現した場合、簡単にリユースが効かないのも事実です。

二活用して交通をクラウド化し、公共交通か否か、またその運営主体にかかわらず、自家用車以外の全ての交通手段による移動を1つのサービスとして捉える概念が脚光を浴びています。

いわゆる“もの”から“こと”への転換です。
そこにはサブスクリプションの手法が採用され、ビジネスの在り方の変革も伴い、循環の在り方がより促進される可能性を秘めています。

 リユースとリサイクルはお互いに反する行動ではありません。
短期に見るとリユースが進むとリサイクルへ回る対象が減少するので、2択のイメージを持つ方がありますが、しかしシステム全体を考えると永久にリユースできる製品はありません。
あれば理想ですが、そのような世界は進歩がないとも言えます。
必ず、リユースができなくなる時期が訪れます。
その際には単に廃棄するのではなく、効率的なリサイクルが望まれます。したがって、リユースシステムのバックアップとしてリサイクル(一部は廃棄物処理)を考えておくことが必要なのです。


 この場合の考え方の難しさを考えましょう。
まず、製品は多くの部品で構成されており、部品はさらに多くの素材で構成されています。
リユースされるとリサイクルまでに結構長い時間がかかり、そのために製品に合わせたリサイクルプロセスはできません。リサイクルは素材で行いますから、使用期限の間に製品を作る素材が変化して、上手く素材回収のプロセスを作ってもその素材が最終製品に使われる確率はあまり高くなりません。

大変古くから大量に使われている鉄やアルミニウム等のベースメタルはいいのですが、非常に多様な機能性素材として使用される高分子材料やクリティカルメタル類は使用素材が変化することも多く、リユースしてその後リサイクルという構造が成り立ちにくいのです。

もう一つ難しさがあります。
それが回収です。

リサイクルもある意味資源を作ることですから経済合理性を持とうとするとある程度の大量処理が必要です。
天然鉱石や石油と異なり、排出物を有効に使う形で大量に集めることは結構難しい社会システムの課題です。