関係者からのメッセージ

使用済みサーメットチップを使った耐摩耗材料の開発

株式会社丸和技研

リ総研の熱意に押されて

株式会社丸和技研 技術営業部  課長
佐々木 誠 氏

使用済みサーメットチップ(*1)を再利用した耐摩耗材料の製品化は、(株)レアメタルソリューションの奈良社長が、使用済みサーメットチップの再利用について福岡県庁に相談に行ったことから始まりました。奈良社長は福岡県庁からリ総研を紹介して頂いたのですが、奈良社長と当社は超硬合金(*2)のリサイクルで取引があったので、三者で打合せをすることになりました。当時、当社の嘉屋社長(現顧問)は、最初からサーメットの再利用は難しいから、この話に乗り気がなかったようでした。その後、数回打合せをしていく中で、使用済みサーメットチップを破砕して粒子を作り、その粒子を溶接材料と混ぜて、耐摩耗材料を製作することを提案しました。

使用済みチップの写真
使用済みのサーメットチップ

しかし、これを製品化するためには、使用済みサーメットチップを破砕して粒子にする必要がありました。サーメットは超硬合金と同様、ダイアモンドの次に硬い材料と言われており、破砕することは難しいと考えていました。それに対して、当時の永野コーディネーターを筆頭にリ総研メンバーは、何とかしたいという思いがあったようで、破砕する方法を調査し、破砕テスト、テスト結果の整理およびコスト算出まで、実施してきました。

サーメット粉砕後
破砕後のサーメットチップ
サーメット分級後
分級後のサーメットチップ

最初のテストは爆砕による破砕テストだったのですが、コスト的に事業にするには難しいと当社は判断しました。それに対しリ総研は、別の手を探し始めて、ある破砕機を見つけてきました。こちらの破砕テストも爆砕と同様、リ総研で実施して各種データを提示してきました。これなら事業化の見込みがあると判断し、研究開発を進めてもよさそうだと思ったのですが、当時の嘉屋社長は前向きにはなりませんでした。最後は、リ総研からの業務委託という形で、当社がサーメット粒子を溶接したサンプルを作製し、基礎的な分析等を実施しました。その結果、溶接による複合材料ができそうだということが分かったので、ようやく研究会へ進む段取りとなりました。その後は、研究メンバーとして、回収を担当する(株)レアメタルソリューション、材料の分析・評価の担当として、九州工業大学の徳永准教授、そして溶接関係のアドバイザーとして福岡県工業技術センター 機械電子研究所に参加していただき、2年間の研究会、その後2年間のプロジェクトと進み、何とか実証実験による評価までたどり着くことができました。今思えば、あの時のリ総研の粘り強い押しがなければ、新たな事業を探せていなかったかも知れません。

本格的に事業を始めてまだ1年ちょっとですが、少しずつ実績が積みあがってきています。しかし、新たな課題も出てきており、改良を続けて行かなければならない状況ではありますが、当社の事業の柱の一つとして拡大していける見込みができてきたと思います。

 

*1サーメットチップ:TiC(炭化チタン)を主成分とした大変硬い材料(サーメット)でできた機械加工に使用する切削工具。

*2超硬合金:WC(炭化タングステン)を主成分とした大変硬い材料。タングステンがレアメタルであることからリサイクル方法が検討されている。

製品の写真
耐摩耗材料の製品
リ総研より

使用済みサーメットチップは、超硬チップに比べ金属価値が高くないことから、世の中では見向きもされなかったため、廃棄処理されていました。色々な方、組織の粘り強い頑張りによって、構想から実用化まで約6年で、原料の供給体制、硬い材料の粉砕技術開発、耐摩耗性製品の製造・販売と一連の仕組み作りができました。既に一部製品は実用に供され、優れた成果をあげています。

リ総研はこれからも、県内企業等とのマッチングを進めることで、実用化が見込まれるリサイクル技術の開発及び社会システムの構築に取り組んでまいります。

担当コーディネーター:河田 弘

研究成果

 

 

株式会社丸和技研

代表者:代表取締役社長 嘉屋 文康 氏
本社所在地 〒822-0003  福岡県直方市上頓野4965-1
電話番号 0949-26-6733(代)
企業ホームページ  www.maruwagiken.co.jp/